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zoom RSS 不可能に挑んだ好著

<<   作成日時 : 2009/09/13 21:58   >>

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Amabile監修『80's Romance Music Disc Guide』カラーフィールド・パブリケーションズ、2009年。

今回のレビューは趣味の本で、80年代ニューウェーブのアーティスト紹介&ディスクガイド。
この種のガイドブックは基本的に2つの両立しにくい内容を含んでいる。一つは特定の音楽ジャンルで主要なアーティストとその代表作の紹介・位置づけ・評価で、もう一つはそのジャンルを知るには何を聴けばいいかという買い物の参考となることだ。
大まかなジャンル分けでのガイドブック(例えば「ロックの名盤」みたいな)とは違って、根強いファンはいるもののメジャーとは言いにくい80年代ニューウェーブ限定で本を作る場合に、いま現在で出ているCDの入手可能性の問題がある。いくら「名盤!」という評価をしてもそれが廃盤では読者が買いたいと思っても買えない。そういったディレンマの中で、廃盤が多くなってもジャンルの歴史に重点を置けば年代記のような本になるし、入手できるCDに限定して掲載すればディスク選びが最適でなくなる危険がある。多分ニューウェーブというジャンルで「正確な歴史」と「入手可能性」の両立はほぼ無理だろうと思っていた。

だが年代記とディスクガイド両方を圧倒的な情報量と巧みな構成で両立してしまおうという本が出て、それがこの本である。全640ページにわたって808StateからZaine Griffまでニューウェーブのアーティストを網羅的にカバーしており、それぞれのアーティストごとにBestシングル・Bestオリジナルアルバムを紹介することで年代記・歴史知識的な要素をみたしつつ、一方で入手しやすいベスト盤もあわせて紹介することで実際にこの本を見て買い物できるように工夫されている。QueenやRoxy MusicのようなオールドウェイブやFiction Factory・Gazeboといった一発屋はアーティストとしては取り上げられていないが、巻末のシングルガイドで紹介されている。ニューウェーブとその周辺音楽を網羅的に取り上げつつ、知識読み物で終わらずにディスクガイドとしてもかなり使えるという、情報量と実用性の両方でこの分野の本としては決定版といえるだろう。

内容の構成をちょっと紹介する。私の得意アーティストのBlow Monkeysのところを見てみると、Bestシングルが"Digging Your Scene"、Bestオリジナルアルバムが"She Was Only Glocer's Daughter"、それと数種類あるベスト盤からいちばんよいと評価されたものが紹介されている。他に気になって見てみたのはSiouxie & the Bansheesのように活動期間の長いバンドだとシングル・アルバムのベストをどの時期に選ぶか、というところ。そのあたりに執筆者の好みが出るのも読んでいて興味深い。
ということで買ったけど情報量が多すぎてぜんぜん読破できない。通勤電車で毎日30ページずつ読んでも1ヶ月かかる。

監修とメイン執筆者のAmabileさんは8年前からの知人なのだが、このジャンルでこれだけの知識を持っているにもかかわらず、ものすごくいい人だ。だいたいニューウェーブ愛好者って詳しくなるほど衒学趣味になったり、あるいは「あのころ自分はこんなに○○だった」的な昔話*1でヒエラルキーを作ったりしてイヤな人間になっていきがちだけど、Amabileさんはこれだけ博識なのにまったくそういう部分がないのが私からみると奇跡の人というか。
アルバムや曲を紹介する彼の文章に愛が満ちているのもよい点で、聴いてみようかという気にさせる。当時の写真もきれいでかっこいい。
ただ読者層はどのあたり?という問題は少しあるように思う。この内容で価格が2100円というのは破格の安さと思うが、予備知識ゼロの初心者には内容が濃すぎるだろう。おそらくは当時リアルタイムで聴いていてまだ今でも関心を持っている人が主要な購買層ということになるんだろうけど、それだとマーケットは限られるだろう。でもプレイバック需要というのは意外とあるかもしれない*2
でもものすごい本なので音楽好きの若者にも読んでほしいとも思う。というかまえにここで紹介したCorpus Reviverの2人は読めw。

ちなみに本の題名はAmabileさんが名古屋でやっているイベント名と同じだが、元ネタはThe Belle Starsというグループの曲名。プロモビデオが動画であったけど当時のドラマ仕立てでやたら長いw。



*1 例えば○○に「坂本龍一の番組でデモテープ取り上げられた」とかが入ったりする
*2 師匠の書いた本の中で最速で重版したのは『新左翼の遺産』。「昔を思い出して買ってる人が多いんじゃ?」とかw。プレイバックといえば村田晃嗣の『プレイバック1980年代』は想像と全然違う本でつまらなかった。だってあの人いかにも「80年代はサザンorユーミンBGMでドライブしてディスコでEW&Fで踊ってました」的な外見だし、題名みたらそういうネタ想像しちゃいますよw。

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